1982年に和歌山市で結成、以来圧倒的なステージパフォーマンスでみんな大好き、ジャマーバンドの膨大なオリジナル群から私の好きな10曲を選んでみる。
バンドのキャッチコピーは「人生に愛と笑いと音楽を」
天国のラジオ
小米、こよね、ひな子が呼んでる
あの夜から始まる、天国のラジオ
ボーカリストが年を重ねると歌い方に変化が現れるのはよくあること。妙にタメたり発音をいじったり。枝雀も、私は喋り方のアクが強くなかった小米時代の落語の方が好きだった。かつて落語といえば上方落語で、お高くとまっているけれど面白くない江戸の落語より涙が出るくらい笑わせてくれる上方落語がテレビでもラジオでも席巻していた、私が中学生だった頃はね。
とにかくオシャレなメロディとコーラスワーク。で、歌われる歌詞が小米と吾妻ひな子。オシャレの対極。吾妻ひな子師匠知ってます?枝雀ですら知らない人がおおいだろうに吾妻ひな子って。座布団にペタリと座って三味線抱えて音曲漫談してたお姐さんですよ?
音のメリハリの気持ち良さ、シンプルな歌詞はノスタルジーに傾きすぎることなく心に響いてくる。何かがきっかけになって、無鉄砲で前のめりで希望と不安で胸をいっぱいにしていた「あの頃」を思い出す歌は沢山あるけれど、そのきっかけが桂枝雀が死んだというニュースであることがジャマーらしい。悩める小米をひな子が「こっちで喋りまひょ」って呼んだんやな。まだまだ「あの頃」の無鉄砲さや希望や不安をそのまま心の中に抱えたままのおじさま達だからこそ、「ショックやったけど、あんまり悲しなかったな、なんでやろ」と歌えるんだろう。
万博
たくさんの田舎者たちは 甘栗とゆで卵を食べながら旅に出る
なーんなーん南海電車
OH!エキスポまた来る!大阪燃える!握手をしよう!
最近のライブの締めの一曲といったらコレ。真空パックされた高度経済成長へと続くあの時代の熱気をそのままライブの勢いに乗せ、ボルテージ爆上がりのナンバー。大阪万博の地元JACKLIONでやったら盛り上がり最高潮ですわー。
ライハチ
僕はライトで8番さ いつかはショートを守りたい
秋の風が吹いている 遠くでエースが投げている
今では放課後にいろんな学年の子が寄って野球して遊ぶことなどできないんだろう。遠くの外野でぽつねんとボールがくるのを待っている少年。内野のあたりではワァワァ試合が進んでいる。高い空、夕暮れが近い。優しくもの悲しいメロディがきゅっと胸を締め付ける一曲。
笑っていれたら
笑っていれたらええな 怒っているよりええな
いつもいつでも笑っていれたら
とても平易な言葉で語られる人生の至言。ミディアムテンポのキーボードイントロにヒロジさんのハスキーな声が乗って、この歌を単なる人生の応援歌ではなく、どこか内省的なものにしていく。静かな1番が終わってコーラスが加わる2番になると、曲の印象がガラッと変わる。keep on smiling! 食い気味に入る重層的なコーラスが、曲をゴスペルへと劇的に変化させる。苦しむものが救いを求める姿を全力で肯定する力強いエナジー!いつも、いつでも笑っていれたら!
谷町線の窓に映る 疲れた顔が
でも大丈夫なのさ!
頭の中に ジミ・ヘンドリックス ジャニス・ジョプリン
次々立ちあがる奴らがいるから
圧倒的な歌唱力の持ち主、あにきさんが歌い上げるウッドストック。あの夢の続きをまだ僕らの頭の中で見ている、そう歌うキャリア39年のバンドマン達。ラスト、囁くように歌う「ピースサインが波のようさ」がグッとくる。
国道42号線
国道42号線 南へ走る
紀勢本線は左、右手は海
和歌山 和歌山 地道を南へね
和歌山生まれのバンドなので、和歌山愛に溢れた楽曲も多数。中華そば、知らんかった、海に行こう、丸正百貨店、などなど。最近ではこの曲がお気に入り。海沿いの道を軽快に自転車で走る、その爽快感が伝わってくる。そういえば、ペダルを漕ぐのにぴったりのリズムだな。
デイケアサービスセンターのワゴン
毎日忘れていく 大切なことから
毎日思い出せずに悔しがるんだ
ゆっくりと死んでいく社会のなか、諦めきれない心のうちを、動きが止まったような風景に同化させていく歌詞。決め決めのリズムで畳み掛けていくサビは、メロディーがキャッチーなため、より一層ヒリヒリと心を抉る。
深呼吸
吐き出してmoonligt 吸い込んだsunshine
新しい酸素が欲しい 新しい勇気が欲しい
ジャマーの中ではあまり聞かれないナンバーかな、でも私は大好き。あからさまな応援歌ではないけれど、ぐっと背中を押してくれるような、そんな歌。頑張るゾッと声高に言ってるわけではないけれど、こうしてゆっくり深呼吸していたらまだ見ぬ明日にも立ち向かっていけそうな気がする。深呼吸にぴったりなゆったりしたナンバー、ドラムの柳生さんのコーラスがいい感じ。
言うた言わん
あのね僕はそんなこと言うてない! 全然言うてない
ゆーてないでぇー ゆーてないでぇー
ジャマーバンドは基本小野田さんがメインボーカル、そして曲によってはヒロジさんがボーカルを取る、そしてごくごく稀にあにきさんという形だ。ボーカル二人、と言うことで、ツインボーカルでもって歌われる曲もある。ライブで必ず歌われる「素敵なリズム&ブルース」もそう。で、この曲はツインボーカル曲というよりは、掛け合い漫才が歌になったようなご陽気なナンバー。いやー、無敵やな、この人ら。
All Right
いろいろいろいろ言うさ いろいろいろいろ聞くさ
いろんな人がいるさ All Right!
人生経験豊富なおじさま達だからこそのリアリティを持った歌詞が、ドラマチックな展開のアレンジとも相まって、圧倒的な多幸感でもって聞くものを包み込んでくれるスーパーな一曲。達観?破れかぶれ?いやいや、まぁ人生いろいろあるわな、いろんな人がおって、色々しんどいけど、僕はOK!君もOK!みんなOK!OK!OK!OK!
コロナ禍でしばらく遠出のライブは自粛してたけれど、ようやくぼちぼち動き出そうか、というところ。11月13日京都モダンタイムス、東京は12月11日高円寺のJirokichiにてライブです。楽しいですよ!ぜひどうぞ!