この夏3本映画を観た。その感想を書いておく。
「リザとキツネと恋する死者たち」http://www.liza-koi.com/
「シン・ゴジラ」http://www.shin-godzilla.jp/sp/index.html
「君の名は。」http://www.kiminona.com/index.html
「リザとキツネと恋する死者たち」
ハンガリー映画。ハンガリーでは大ヒットしたらしい。ぺかっと笑うトミー谷のビジュアル見て絶対みたい!と思い、ヨーロッパ映画を上映するイベントで見るべく京都まで出かけた。
全編流れるレトロな歌謡曲が頭にこびりつく。ロカビリー風味の「ダンスダンス ⭐️ ハバグッタイム」の中毒性はどうだ。
Erik Sumo & The Fox-Fairies - Dance Dance Have A Good Time ダンスダンス☆ハバグッタイム
死の世界の住人「トミー谷」の歌う日本語歌謡曲群が、この映画のためにハンガリー人が書き下ろしたオリジナル曲というのが素晴らしい。ボーカルもハンガリー人だ。(トミー谷役のデヴィッド・サクライは口パクとのこと)楽曲はグループサウンズ風だったり乙女フォークソング風だったり勇気鼓舞系歌謡曲風だったりでバラエティに富んでいる。それら全てが「微妙なさじ加減」で、日本の昭和歌謡曲のエッセンスをキッチュなものとして提示する。監督は日本オタクとでも言おうか、歌謡曲・JPOPはかなりマニアックに深いところまで聞き込んでいることをインタビューで知った。
このトミー谷の歌う曲たちを(や、口パクだけど)何度も聞きたいのでBlu-ray買ってしまったわ。
ストーリーは単純、70年代ブタペスト、リザにだけ見えるユーレイのトミー谷が、次から次へとリザにちょっかいを出す男性を殺していく。窮地に立たされるリザ。そしてトミー谷の真の目的は如何に。
リザに相対しているときのトミー谷がキュートだ。声は発しないが微笑んだり頷いたり時にはしょんぼりしたりでリザと心を通わせる。しかし所詮実体のない存在の悲しさ、好きな人を抱きしめられない苦しさや友達以上には思ってもらえないやるせなさを見ているこっちが勝手に慮ってキュンとする。それはラストのドライブのシーンでもシミジミそう思ってしまって、やーん、トミー、もういいやん、次行こうぜ、次!なんて思ってしまう。それはヴァンパイヤ問題とでもいいますか、愛する人は老けていくが自分は変わらないという結末も見えて、それでいいのか、トミー谷。
までも、そんなことはさておいて、妙な笑いの小ネタもモリモリ挟んで、話はとんとんと進んでいく。初めはただ単に珍奇で能天気だったトミー谷のロカビリー歌謡も、陰惨なシーンに被さって歌って踊られると、同じ曲も禍々しい様相を帯び、つまりは死神の狂気の体現となる。
もうね、いちいち可愛い。へんてこりんな人たちばかりがわんさか出てきて、ヘンテコな具合に幸せを求めて一所懸命に突き進む。大好き。
「シン・ゴジラ」
これはやはりIMAXでしょう!とエキスポまで張り切って出かけて観た。
面白かった!もう一度観たいけれど、今度は一時停止しながらがいいな。じっくり行きつ戻りつしながら。
全体的にとっても気に入ったけれど、だからこそちょっとモンク言いたい部分もあり。
アメリカ大統領特使のクオーターに石原さとみ嬢というキャスティングには、違和感あった。もうどっからどう見ても東洋人だもの。「007は二度死ぬ」でボンドが日本人に化けた時と匹敵する違和感。もう少し役柄とマッチする風貌の女優さんでも良かったのではないか。
あと気になったのがゴジラのしっぽの長さ。ちょっと長すぎないかね。ゴジラのしっぽにも重力はかかるでしょう。あの不自然に空中に浮かんでいる長いしっぽが、「現実」vs「虚構」の「現実」部分を目減りさせる。付け根から3分の2までぐらいを地面に引きずっててくれたらなぁ。
静かで悲しくて重い音楽が流れるなか、東京を破壊するゴジラの場面が素晴らしかった。あぁ、やめてやめて、辰野金吾の東京駅壊さないで、せっかくもとどおりにしたのにー!大好きな旧朝香宮邸は潰さないでねー、なんて思ったり。
「君の名は。」
新海誠作品は「秒速5センチメートル」の3話目のみ、見たことがある。もちろん山崎まさよしファンだもの。ファンクラブ会員だもの。「one more time ,one more chance」のPVだ、と言われるのもわかる。だって歌の内容そのままだもの。それだけ「one more」の曲が持つ力が強いということだろう。この曲は「月とキャベツ」「秒速5センチメートル」と、2本も映画を作ってしまった。「月とキャベツ」についても、同じく「one more」の長いPVだという批判があったことを思い出す。
新海誠という人は、わりと音楽に映像を奉仕させるの平気な人なんだなと「君の名は。」観て思った。歌というか歌詞に合わせて映像を作ったりするので、ちょっとムズムズする。そうしたところがPV的手触りをもたらすのではないか。「月とキャベツ」では、山崎氏は本編のインストゥルメンタル音楽も制作していたが、それは映像を見ながらアコギで曲を作っていくという作業だったそうだ。反対のアプローチ。
背景は素晴らしく美しい。光が溢れ出している。秒速見て感じた重力のなさ、体重を感じない人物の動きは、美しい背景に見とれる分、それによって気持ちを削がれる割合も少なかった。
ストーリーも空間と時間を組み合わせてハッとする展開を作り出しており、楽しめた。しかしねー、確率的にありそうに無い現象が同じ場所に何度も見舞われるなんてことは、無いでしょう。だから池はそもそも無くて良いと思う。
音楽はRADWIMPSというバンド。私は初めて聴いた。申し訳ないが、好きでは無いタイプの歌だった。ビートが、リズムが、ロックではなかったので。私の中の「ROCK」とは、リズムに対してかぶり気味なくらい早く強いアタックで歌われるもの。RADWIMPSのベターっと語られる歌は、そうそう、「リザとキツネと恋する死者たち」の中で歌われた、ハンガリー人が制作した、概念としての昭和歌謡曲に似ている。
海外でもカルトな人気を誇る「秒速5センチメートル」、「one more time ,one more chance」の人気も高い。特にスペイン語でのカバーがyoutubeにたくさんある。山崎氏の歌唱はスローな楽曲でもビートを感じるし、揺らぐビートが曲に洋楽的アレンジを施しやすい隙間を作ってくれる。
「君の名は。」は秒速よりももっと世界で人気を博するだろう。いろんな国の人が主題歌や挿入歌をカバーしたりするのだろうか。その時は、ハンガリーの人がROCKではない昭和の歌謡曲をキッチリ作って見せたように、あの隙間のないべたーっとした歌をその通りに表現したりするのかな。いろんな国の人がカラオケで日本の歌を歌って競うテレビ番組、あれも最初はべたーっとした日本の歌をROCKに歌ってみせるのが興味深くて好きだったのに、回を重ねるごとにべたーっとした歌をべたーっとしたそのまま歌う人の方が高得点になって、つまらなくなった。早く世界で公開して注目されて、いろんな国の人に歌ってもらいたいものだ。