anemone

ぼんやりしたり、うっかりしたり。

渋谷区限定便所掃除

PERFECT DAYSを観た。

著名建築家が設計した渋谷区の美しいトイレ群を、かっちょ良くデザインされた制服を着た、かっちょ良い渋オジが掃除する映画であります。私はトイレ群を見るのが主な目的なので、もう少し詳細に見たかったし、もっと多くのトイレを見たかった。トイレと書くとまだマシに思えるけど、公衆便所ですからな。便所掃除のホンマのところ、糞尿・嘔吐物にまみれた惨状に対処する大変さはキッパリ省かれているところが、もしかしたら否定的に論評されるかもしれない。までも美しいトイレ群ありきの企画ですから。それの宣伝映画が出自です。私はお金払って汚いものを見させられるのはイヤなので、その点はありがたかった。主人公の職業は何がなんでもトイレ掃除でなければ!というものでは無いんだから。

こういう、なんでしょ、工夫する余地が少しあってルーティンの決まっている仕事を毎日こなしていく安心感ってのは、すごくわかる。いろいろ乗り越えなければならない事象がある時に、心を整えてくれる。販促物制作の仕事からいっとき封筒印刷の仕事に変わった時、それをつくづく感じた。私一人だけの印刷部屋。長三封筒を1デザインにつき2箱とか3箱とか小ロットで印刷していく。倉庫から必要数封筒の箱を出し、データチェックして、試しに何枚か刷ってみてよければ本刷り。ひと束ごとに乾かして、出来上がったら次のデザインへ。同じ工程を繰り返していくうちに最初のが乾いているので箱に納めて表に一枚見本に貼り付ける。朝礼以外はずっと一人きりで印刷していた。多分主人公も、トイレ掃除でなくても封筒印刷でも同じようなPERFECT DAYSを形成できたろうと思う。あー、ただ使用者からダイレクトに感謝を受け取ることはないかな。その代わり流れを極めて頑張ればノルマを超えて印刷できたから、毎月5000円ボーナス貰えてたけれどね。ルーティン生活によって心の奥底に納めていた感情をまた呼び覚ます出来事が起こり、喜怒哀楽のうち喜と哀がないまぜになった表情を見せる主人公。役所さん見事。

金延幸子さんの挿入歌も驚いたけれど、きれいな女将さんがいる小さい飲み屋が出てきた時に、お客さんにあがた森魚さんおったりしてなー、と思ったらホンマにいてはってギター弾かはって、そらまぁビックリよ。後、別の飲み屋のテレビの中では、山本投手が投げてました。

赤色エレジーでも良いけれど、この映画だとこの曲かな。