anemone

ぼんやりしたり、うっかりしたり。

地縛アート

佐伯祐三展に行ってきた。郵便配達人の絵と北野高校の人ってくらいの雑な認識しかなかったんだけれど、滅茶苦茶上手い人だったわー。んで男前だった。美男子薄命。

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物凄い速描きだった(午前一枚午後一枚とかのペース!)こともあり、画面に塗り込められたスピードがもたらす熱量が凄い。これは私個人の分類なのだけれど、平面作品にはファインアートとスペキュタクラーイラストレーションがあると思っている。スペキュタクラーイラストレーションの場合、印刷物になってサイズが小さくなったとしても、得られる印象はそう変わらない。しかしファインアートの場合、実物を前にし、画家のストロークであったり筆致の速さや遅さであったりを実際に感じることで、絵のもたらすエナジーや意味に対峙することができる。佐伯祐三氏においては、短い時間の中でスパッと切り取られた風景や人物が、的確なナイフ使いや筆使いによって「こうでしか成立し得ない画面」となってそこにある。今回の私の一枚は「新聞屋」なるほど朝日新聞社が持ってるのね、この絵。

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ほら、こうした画像だとこの絵の持つヒリヒリやらドキドキが全然伝わらん。ざざっとナイフで重ねて塗られた絵の具が作る煤けた壁のマチエール、そこにビュンビュン突き刺さっている新聞に踊る文字たち!暗い店内へと導く虚無との対比。

東京でも大阪でも絵を描いたけれど、やっぱりパリでの画業ですよ。パリの街をかなり忠実にモデルとし、そこに佐伯祐三氏の独自の切り取りとデフォルメを施す。パリの街並みあってこその絵の世界と思う。描きたくなる街並み。ミューズとしてのパリ。パリの街並みの中に一つこんな絵が。「公衆便所」

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そこで連想したのがこの映画。 ヴィム・ヴェンダース監督「PERFECT DAYS」

渋谷で働くトイレ掃除人の日常を淡々と描くってことなんだけれど、コレも場所が渋谷で無ければ出来なかった映画。元々こちらのプロジェクトがあってこそ。

そら、公衆便所を複数のプリツカー賞受賞者含む有名建築家たちにつくらせた場所なんて、この渋谷区ぐらいでしょう。そこいらの汚い公衆便所を掃除して回る中年男の日常だと、なかなか詩情溢れる画面にはなり辛いわねー。

以前東京に遊びに行った際、街歩きの建築ツアーでいくつかはこのプロジェクトのトイレ回った。早くこの映画も観たいなぁ。

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ふふ、この写真の佐伯祐三氏は藤浪選手にちょっと似てるな。

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お!山田五郎氏のYouTube佐伯祐三登場!その中で佐伯祐三の濃い顔は、昔の大阪人にはちょくちょくいた「大阪フェイス」だと仰っている。で、その大阪フェイスは、ガンバの宮本・本並、俳優の北村一輝などに脈々と受け継がれている、と。じゃ堺出身の藤浪選手も大阪フェイスという事で一つよろしく!もひとつ、佐伯祐三氏は北野で野球部だったそうで、内野手&投手だった、球は速かったそうな。