anemone

ぼんやりしたり、うっかりしたり。

第五の邦

面白かった!グイグイ読むのが勿体無くなって、途中休み休み読んだ。「今読んでる本、面白いんですよー、インカ帝国がスペインを征服する話です!」と言うと、皆もれなく、面白そう!と反応してくれる。

スペインがやってくる以前に、インカ帝国が鉄・銃・馬・病気に対する免疫を持っていたとしたら、という前提のもと繰り広げられる歴史改変小説。世界史を選択していたので薄ぼんやりと大体の歴史の流れはわかるのだけれど、インカ帝国やアステカに対する大航海時代のヨーロッパ列国の非道ぶりは、授業受けてても「キリスト教徒はエグい事ヘーキでしよるなぁ」と胸糞悪かった。つい同情してしまうインカ帝国がこの話の中では強い強い。白人でなくキリスト教徒でも無いが故に、より一層皇帝アタワルパの活躍に胸が踊る。史実とフィクションを上手く混ぜているその按配を詳しい訳注が教えてくれる。異教徒に征服される、宗教戦争只中のキリスト教国の変容が面白い。この太陽神をあがめる帝国が、天照大御神を信仰する日ノ本ジパングにやってきたとしたらどうなったのだろうかね。

 

そういえばこんな本もあったな。コロンブスアメリカを発見した?この地は誰が発見したかとかいわれる前からずっとここにある。そっち側がそういう風にいうなら、こっち側の視点に立つと、誰が漂着したコロンブスなる男を発見したのか、という話になるな。というユーモア短編。西欧諸国の思い上がりを笑う。

 

それと、ちょうど時を同じくして見たこちらの動画。ルーカス・クラーナハの解説(マッパプラスワンこそエロの真髄)なのだけれど、クラーナハはルターの宗教改革プロパガンダを担ったというお話が興味深かった。

西洋史の知識があればあるほど、虚実の綯交ぜ具合が楽しめるだろう一冊。でも知識がなくても楽しめた一冊。