昨日に引き続き、生きた建築ミュージアムフェスのガイドツアー参加。本日は「綿業会館」大阪の建築遺産の横綱ですよ。本来は土曜日曜がフェス期間だが、土曜日に貸切の婚礼があったそうで、綿業会館だけ日月の開催。それが功を奏して抽選に当たりやすくなったか。念願叶ってのガイド付見学であります。
個人の寄付を元にできたのは中之島中央公会堂と同じか。以前勤めていた会社の近くなので前はよく通ったが、中に入るのは初めて。歩道に方向を示す絵が嵌めてある。
設計は渡辺節氏、村野藤吾氏も参画した。重厚な金属の飾りがついた扉を開けるとまず吹き抜けと階段で大きく開けた玄関ホール。
中央にいらっしゃるのが、私財を投じた東洋紡の岡氏。昭和3年100万円、現在の価値で50億円の寄付と、関係業界よりの50万円を加えてこの建物は出来た。中央のシャンデリアはミラノ・スカラ座のものを模したものらしい。当初はもっとシンプルな照明器具が付いていたそうな。軽やかな階段を降りて地下のグリルへ。
部屋を分けるボリュームのあるタイル壁の青のグラデーションは海をイメージしたもの、また壁にランダムに嵌められたタイルが可愛らしい。1階に戻って、天井の立体的な造作が美しい会員食堂見学。
会館は空調が行き届き、当初から全館暖房がなされているとのこと。壁の四角は空気孔。可愛いデザインのスタンド照明はあちこちの部屋に置いてあった。さぁ瀟洒な飾りのエスカレーターを使って上の階へ参りましょう。
3階の談話室は、綿業会館でも一番有名なお部屋じゃないだろうか。泰山タイルで飾られた壁が目を惹く。
泰山タイルと建物を大阪大空襲の火災から守った防火ガラス窓
壁一面が泰山タイルではなく、暖炉横の壁のみ。あとは木部を1階分の高さに張りめぐらせている。元々はそこまでの高さでこのように2階分の天井高はなかったが、渡辺氏が是非ともこうしたいと要望を出したのだとか。同じく3階の特別室(貴賓室)左官仕事の天井レリーフがすごい。コテで形をサクサク作っていったんだなー。
小さなお部屋のここは、米軍接収時に検閲司令官室として使用されていたそう。母の実家も非常に田舎ながら洋館を建てていたので、敗戦後米軍に接収されていた。将校とその家族が使っていたらしい。3階にはもう一つ大きな会議室もある。照明も空気孔のグリルもキュート。
この会議室は現役で使用されているとのこと。床には現在ではもう手に入れることはできないという継ぎ目なしの手織り段通によるフカフカな絨毯が敷かれ、繊維業界の倶楽部建築である面目躍如。最後は最上階7階の大会場。土曜日はここで披露宴が行われていたとのこと。
天窓を模した天井照明、かまぼこ型の天井の立ち上がり部分を間接照明で照らすのも当初から。現代の意匠かと思ったが昔からそうした照明計画だったそうで、柔らかい光が大きな会場を包んで空間が優しい。
丁寧に説明をしてくださり、ありがたかった。堪能いたしました。部屋ごとにクイーンアンスタイルだったりアンピールスタイルだったりジャコビアンスタイルだったりと意匠が違うのが、迎賓館赤坂離宮と一脈通じるなぁ。金具の細かいデザインやら照明器具が可愛かったりするのは朝香宮邸(東京都庭園美術館)だし。繊維業に沸く大阪が東京を凌駕する大都市として君臨した時代の輝きと勢いを、今に伝える名建築。今日は駆け足で見ただけだが、いつか機会があったら、あの空間に身を置いてじっくり時を過ごしたいもの。