anemone

ぼんやりしたり、うっかりしたり。

海辺のオーバールックホテル

ホテル川久へ一泊旅行。建物を見物するのが趣味、一度は行ってみたかった。「ポストモダン建築巡礼」には異世界との記述で表現していたが、まさにその通り。西洋風のロマンティックなお城と言うよりも、ビザンティン風な部分、イスラム風であったり中華風であったり、宴会場の天井画はアバンギャルドな絵柄の磨き出し絵だし、ありとあらゆるところが様々な様式の何かしらの装飾で飾られている。それらが世界の職人技大集合のホンモノでできている。

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決してスマートでセンスが良いとは思えない雑多なものが詰め込まれた空間ではあるけれど、間近で見たら最高峰の技量と素材が圧倒的な熱量でもってこちらに迫ってくる。まさに魔窟、異世界。もうこのような金に糸目をつけない建物は創出できないだろうと思われる。

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悪の枢機卿や御伽噺の邪悪な女王が根城にしている魔窟感満載のバルコニー風の部分。ここからマントを風に靡かせながら世を睥睨していそうだ。列柱が飾る空間だが、一見鳥居にも見えてしまうという不思議。


そして今回たまたまだが、ホテル全館を使ってのアートイベントが開催されていた。

ホテルの館内意匠とコラボするような形で6人の作家によるコンテンポラリーアートが展開されている。

わざわざこのアート展を見にきた宿泊客はいなかったような。夕食後に色々と作品を見て回った時には誰にも会わなかった。布をメインに使い、ウェディングドレスをモチーフに父親との辛い葛藤を紡いでいく作品やら、大広間の畳を何十畳も持ち上げる作品やら、小宴会場がずらっと連なる廊下を通り、作品が一部屋一部屋展示してあるのを覗き込む趣向であったり、小さな暗いバー的なところに音楽を流しVRで別の世界を見せるものだったり、いやもう何というか、作品を鑑賞するというより、何より怖い!誰もいないくたびれた豪華ホテルの暗い寿司バーに光るネオンサイン、見渡せない奥の部屋からはぼぅっと明かりがついたり消えたりしている。怖い、怖いよ!また、元々が急なドーム天井で卵型の浴場は水が抜かれ、インスタレーション作品が雑多な感じで幾つも置かれているのをシャワーブースが並んでいる所を抜けて見にいったり。廃墟感ハンパなし。人の声が流れる音響効果を使う作品も幾つかあり、人の気配のない角から喋り声がもそもそもそもそ聞こえてたり、怖い、怖いよ!

昔は豪華ホテルでならしていたが今は全館が賑わうことはなくて、暗い部屋が並ぶあたりに何やら存在していて、あぁ、確かめずにはいられないこのドキドキ。連想したのは「シャイニング」のオーバールックホテル。いろんな想念が襖の隙間から「お今晩は!」

ま、そんなこんなで楽しませてもらったホテル川久。建物を見るだけでもお腹いっぱいになれる。もちろんお食事もお腹いっぱいいただきました。建物好きには一回は行ってほしいが、2度目はないかな。