anemone

ぼんやりしたり、うっかりしたり。

東京見物覚書 続き

二日目の朝早めにチェックアウト。江戸川橋駅で降りて椿山荘を目指す。椿山荘の向かいにある東京カテドラル聖マリア大聖堂がお目当て。細い道を椿山荘の案内板を頼りにえっちらおっちら登っていく。昨日の原美術館の付近もリッチな住宅地だったけれど、この辺りもゆっくりした生活がうかがえるお家が多いなぁ。高そうなマンションから幼児をつれ乳母車を押した若いお父さんが出てくる。お散歩ですかー。濃い色のサングラスをしていてもなお、お父さんハンサムさんなのが見てとれる。短パン姿もこなれていてこざっぱり、いやー東京のお父さんはカッチョよろしなぁ。てなことを思いながら追い越し、少し進むと何やら賑やかなグループが横道から入ってきた。言葉の感じではドイツ系かな。金髪美人がくるっと振り向き「カテドラルに行きたいのでーす、こちらでいいのデスカ?」と質問。えーーーーーーっと。たたたたた多分方角的にはあっちの方だと思うんだけどううううー、私フロムオーサカでのっとネイバーフッドで私もそこに行きたくて歩いてるんだけどうううううー、そうだ!こういうことは地元の方にききませう!追いついて来た先ほどのお父さんに丸投げする。「この方達カテドラルに行きたいそうなんですけど」あ、はいはい、とお父さん、いきなり流暢な英語でこのまま行けばすぐ見えてくると一団にご説明。うはー、東京の若いお父さんスペック高!惚れる!

なるほどそこからもうあと数m進むとカテドラルの建物が木々越しに見えてきたのだった。銀色の外壁。弓なりに反って輝いている。丹下健三氏代表作。教会は朝早くから開いているのでお上りさんにはありがたい。本日のミサは8時と10時。8時のミサが終了し、見学がお邪魔じゃなくなるまで椿山荘で家へのお土産を物色したりして時間を潰す。さぁ行って見ましょうか。

入り口までくるりと周り、陽気に明るい外からほの暗く静謐な大空間へ。入り口に聖水、いやいや異教徒がこういうものに触ってはいかんでしょ、その横に建物の維持管理のために浄財を、と寄付箱が置いてある。音が響きすぎ司祭の説教が聞きにくいとか雨漏りがするとか、いろんなモンダイもあったようだけど、とにかくこの物凄い建物はずっとここに良いコンディションであって欲しいわね、うちはお西さん、お賽銭感覚で申し訳ないけれど財布の小銭をかき集めてザクっと投入。と、わぁっ!これが噂の残響音というものか「ジャリィィィリィィンンンンンッッッ………」カテドラル内部隅々に響き渡る小銭投入音!うわぁ、ごめんなさいごめんなさいめっちゃうるさいっす、ここはお札を入れるべきだったんかいなーーーっ   気を取り直して椅子に座らせていただく。正面に大きな十字架、琥珀色の光を背に浮かび上がっている。高い天井のトップライトから光が降りそそぎ、荘厳な空気を醸し出す。今までこんなに威厳をたたえた空間に身を置いたことがなかったのでぼうぅっとする。壇上では次のミサの準備をする教会の人たちが足早に動き回っている。いやぁ、やはり写真で見るだけでは感じることが出来ないものが身を置くことで実感できるなぁ。ひたすら感じ入っていたら突然背後からゾゾーーンッッッと大音響!ミサの準備の一環でパイプオルガンの試し弾きが始まった!うわーー、これはひれ伏す!迫力残響で三割り増し!いやー、来てよかった。10時からのミサに邪魔にならないよう退出。すごかった。キリスト教信者じゃなくても死ぬまでに一度はここに来るべき。この建物の形をどう言ったらわかりやすいのかなぁ、真上から見たら十字架型、と言ってもこの銀色の曲面が羽を広げるような形はイマイチ伝わらないだろうし、何に似てるのか… と頭に浮かんだのが飛騨高山のお土産「さるぼぼ」 手足だけのさるぼぼって例えは、んーー、ごめんなさい、えーっとキリスト教徒の皆様申し訳ない。そんなつもりはないのです、なにかもっとイメージ伝わりやすい例えはないかしらん。

頭を悩ませながらまた椿山荘に戻り、ちょっと贅沢してフロント横のラウンジで朝食。こまごま盛られたお料理やクロワッサンに舌鼓。次の目的地銀座エルメスは11時オープンなのでのんびり過ごす。東京って緑も多いなぁ。シャンデリアが煌めく豪華なしつらえのお手洗いを借りてさぁ銀座に出発。

銀座銀座銀座!前回来た時は資生堂のビルに行き化粧して貰い写真を撮った。別人のように美人になった写真で免許証作ったが、ふはは、これって証明写真としてはどうなんだ、本人確認できるのか。今回はそういうお遊びなしでエルメスのビルのみ。レンゾ・ピアノ設計。ガラスブロックで創られた半透明な箱。ガラスブロック越しに外界と軽やかに繋がっているんだけど、物質の他にセンスという見えないバリアーが張り巡らされているような佇まい。私が持っているエルメス製品といえば、元仲人さんにいただいた渋ーい色合いのスカーフ一枚きり。バッグひとつで年収が飛んでしまいそうな工場労働者には縁のない世界だけれど、まぁ臆せず入りましょう。いらっしゃいませと男性に扉を抑えてもらって入る。すぐに新商品の香水を吹きかけたリボンをどうぞと渡される。あぁー、いつもながらちょっと苦手なエルメスの香りが基調にある。あ、エルメスってわかるよね。お好きな人には堪らん香りだと思うが、やっぱり少し苦手だなー。一階中央に色とりどりの鮮やかなスカーフ。鳥が綺麗な色でたくさん描かれたシリーズに一目惚れ。いいなぁこれ。お金があったら買うー!白地にビビッドな色合いのはっきりした柄ってのが好みなのよね。お顔映りを試されたら?と誘う店員さんにいやいやいやいや、ははは…と後ずさりしつつ店の奥を見たら、なんと!昨日原美術館で見たばかりのニコラビュフ「ポリフィーロの夢」のインスタレーション別作品が展示してある!嬉しくなって「昨日原美術館に行ってきたんですよ!楽しかったです!なんでここに?」 「ニコラビュフは今年のエルメス限定スカーフのデザインを担当しているのです」とのこと。限定スカーフ自体には展覧会の破天荒な元気さは希薄だったけれど、うんうん、昨日の展示も充分おっしゃれーなセンスが充満してたものなー。そのまま奥のエレベーターを使って上階のフォーラムへ。エルメスが後援して工房で作品を作らせた若手美術家のグループ展鑑賞。吹き抜け2階分のガラスブロックから浸み出した光が全方向から溢れ、影がなくなるような不思議な空間。作品の方は、まその、コンセプトはありがちというかなんというか、でも素材がエルメス製の皮革でそこに素晴らしいステッチがかかっていたりして豪華で、んーなんとも判断に困るというか、新鮮な驚きには乏しいけれど、なんか立派っていう。ここでは毎月フランス関連映画の無料上映などもされていて、こりゃ母には堪らん場所だなぁ、東京に住んでたら毎月行くだろうな、と思った次第。

お昼は銀座から少し歩いた場所の高架下パン屋さんでサンドイッチ。こんなに美味しいフルーツサンドは食べたことがありません!ゆっくりしていたらもうそろそろ羽田に行かないとダメな時間に。もっと遅い時間の飛行機にすればよかったな。

飛行機の離陸が遅れてしばらく空港で待ったけれども、晩御飯を作るのに充分余裕を持って帰阪。あぁ楽しかった!また行くぞ、東京!次回は来年夏、なんとしても赤坂迎賓館の参観に当たって見物するのだ!行けたらいいな。