anemone

ぼんやりしたり、うっかりしたり。

おとぎ話

あるところにおばあさんが一人で暮らしている。こじんまりしたマンション、もともと和室だった部屋を洋室に作り替え、ベッドを入れた。もう一つの部屋は納戸にして洋服やら季節のものやら本棚やらを置いている。誰かが泊まりに来たら狭いがそこで寝てもらう。おばあさんのマンションは都会に近い便利な場所にあるので、学校が休みになると孫達が来たがるのだ。

小さい台所と、4人掛けのダイニングセット。低いイスでゆっくり出来るサイズのものを慎重に探した。一日の大半をこの食卓でおばあさんは過ごす。食卓にはノートパソコンが出しっぱなし。パソコン用の机を買った方がいいかねぇと思案するが、きっとずっとそのままだろう。お行儀を悪くしても誰にも叱られないので、適当に作ったパスタをパソコンを見ながら食べたりしている。

友人が訪ねて来たらコーヒーを入れて音楽を聴いてお喋りするのがおばあさんの楽しみだ。訪ねてきてくれる友人はほとんどいないが。寂しくないの?と孫は聞くが、一人でいることに慣れてるからね、と笑っている。

おばあさんは曜日によって行動を大体決めている。月水金は家事をする日、火木土日は遊ぶ日。月水金は掃除して洗濯して自分の食べるものを料理する。そのほかの日はなるべく出歩くようにしている。孫や息子達が訪ねてきたときは、曜日関係なく料理する。もともと料理するのはキライではなかったそうだが「でも自分一人だとはりあいが無くてね」

遊ぶ日になるとちょこっとお化粧して、習い事に行ったり図書館に行ったりウインドウショッピングに行ったりしている。歌が上手く歌えたら楽しいだろうから習いたいと思うのだが、ママさんコーラスでもないしカラオケ教室でもないし、ちょうどいい教室がないのが目下のおばあさんの悩みだ。

お家が一番だね、好きなことを好きなときに出来て幸せだよ、とおばあさんは眠りにつく前に思う。このまま二度と目覚めることがなければいいのにな、と思いながら寝る。